私のおひな様
私には大切にしている写真があります。初節句の日、お着物を着て、おひな様の前で撮った写真です。本当に幸せそうな笑顔をしています。写真には写っていませんが、カメラの向こう側には、「あやこさーん」と私の名前を呼ぶ父がいます。
父は、幼いころから私を「さん」づけで呼んでいました。「あやこさんならできるよ」「何だってできるよ」と、父はいつも私を褒めてくれました。私が、今日までがんばってこられたのは、父が私の無限の可能性を信じ、「あやこさんなら何だってできる」と言い続けてくれたからだと思います。この初節句の写真を見ると父の声が聞こえてきます。
私のおひな様は、二つの大きな茶箱にしまわれています。いつも母が大切にしまってくれました。人形がしまわれている箱を開けてビックリ。一体、一体、お顔はガーゼで、身体は白い布で、それぞれ丁寧に包んであったのです。人形たちは、私がふたを開けてくれるのを、静かに待っていたかのようでした。
内裏びなの後ろには、それぞれ金びょうぶを飾りますが、蛇腹に折りたたんだびょうぶは、擦れて傷まないように、全ての折り目には紙が1枚ずつ挟んでありました。
「こんなにも大切に保管してくれていたんだ!」
母はいつも、「うれしいひなまつり」を歌いながら、一体、一体のお人形に声をかけて飾っていました。その姿を今でもハッキリ覚えています。きっと、お人形に「あやちゃんが幸せになりますように」と祈りながら飾ってくれていたのだと思います。すべての箱は、母の愛情であふれていました。母の深い愛にふれ、涙があふれてきました。改めて、父母の愛を感じました。
母は、数日前、救急搬送で入院しました。高齢なので心配でたまりません。今月、温泉に連れて行ってあげようと思っていたところでした。
私は、七段飾りのおひな様を飾りました。母の幸せを祈って飾りました。一体、一体のお人形のお顔をなで、「母のことを守ってね」と声をかけました。
愛とは、相手の幸せを祈る心だと思います。言葉で伝えることができなくても、愛は伝わります。入院している母にもきっと伝わります。
まもなく3月3日、ひな祭りを迎えます。今年は、私が母の幸せを祈ってひな人形を飾りました。日本のこの尊い行事を通して、今、人の幸せを祈ることの「幸せ」を感じています。





あやさんの祈りを、お人形さん方が受け止め、そしてお母さまに届けてくださると思います。私も祈ります。