あいさつの力
- AYAKO TAKANO
- 2024年7月11日
- 読了時間: 3分
私の母は今年の2月、総合病院に緊急搬送されましたが、おかげさまでお医者さんが驚くくらい「奇跡の復活」を遂げることができました。今では、車いすで自由にお散歩ができるくらいまで回復し、長期療養型の病院に転院しています。
母の病室は、病棟の2階にあります。先日、お見舞いに行った時のことです。いつものようにエレベーターに乗り2階に上がりました。扉が開き、さあ出ようと思ったら、目の前に大きなテーブルが置いてあるではありませんか。
「なんでこんな出入り口に?」
その理由は、母を守るためでした。看護師さんは、「お母さまに、自由にお散歩していただけるように、ここにテーブルを置きました」と教えてくださいました。元気になった母は、車いすを自由自在に操って、病棟内を冒険して回っているそうです。しかし、若干認知機能の衰えもありますので、エレベーターに乗って他の階に行ってしまうと、戻って来られなくなる恐れもあります。そこで、母を守るためにエレベーターの前にテーブルを置いたとのことでした。
テーブルを置けば、みんなが不便になります。それでも、母が自由に散歩できるように、そうしてくださったのです。よく「患者さまファースト」という言葉を見聞きしますが、こちらの病院ではそれを誠実に実践していました。頭が下がります。
後日、母の車いす散歩に寄り添う機会がありました。母は、いつの間にか患者さんたちと仲良くなっていたようで、親しくなった患者さんにあいさつをするのを楽しみにしていました。
母は、仲良しの患者さんの部屋を訪ねると、「いるかな?」「元気かな?」と、廊下からそれとなく様子を伺います。目が合えば、笑顔であいさつを交わし、手を振り合っていました。ある患者さんは、横になっていましたが、母を見つけると「よっこらしょ」と身体を起こして、にっこりとあいさつをしてくださいました。
ある患者さんは、ベッドの上に座っていましたが、母があいさつをして手を振ると、その方は母に気づき、とても幸せそうな笑顔で応えてくださいました。母も、幸せそうに笑顔を返しました。
「ああ、母らしいなあ」と思いました。いつも自分のことは後回しにして、人のことばかり優先してきた人です。5カ月前は、自分が大変だったのに、元気を取り戻すやいなや、人を元気づけ、幸せにしていたのです。私は、ずっと母の容体を心配していましたが、人を気遣う母の姿を見て、思わず大笑いしてしまいました。
私は、日頃、多くの方にあいさつの大切さをお話ししていますが、母の姿を見ているうちに、「あいさつには人を幸せにする力がある」ことを改めて確信しました。母のあいさつには、相手を思いやる優しさがありました。愛がありました。
「これが本当のあいさつなんだ」
「あいさつひとつで、人を幸せにすることだってできるんだ!」
私は、「幸せ」は「笑顔」だと思っています。その証拠に、不幸な人で笑顔の人はいません。幸せで笑顔でない人もいません。幸せは笑顔です。母は、あいさつで患者さんたちを笑顔にしていました。幸せにしていたのです。
この日は、あいさつの尊さをまた母から学びました。
母はいつも、私が帰ろうとすると玄関まで見送りに行こうとします。そして、「ごきげんよう!」「気をつけて帰ってね」と手を振ってくれます。これも母の生き方です。いい生き方だなあ。私もそう生きよう!

お母さまのご回復をお喜び申し上げます。
お母様は他の患者さんを元気にする素敵な冒険に出られているのですね。お元気になられて嬉しいです。
あいさつを大切にしているつもりですが、いつの間にか「つもり」になっていたかも知れない、とハッとしました。ありがとうございます✨